2019年度公立高校入試概況
2019年度の全日制公立高校の平均競争率(実質倍率)は1.19倍でした。2013年に現在の入試制度が始まって以降、平均競争率だけを見ると大きな変動はありません。ただ、2019年度は公立高校募集定員規模が2018年度とほぼ同等の状況で、志願者数が公立中学卒業予定者減少数405名の2倍超となるマイナス874名と大幅に減ったことが特徴的でした。要因の1つとして私立専願の受験生が多かったことが挙げられます。首都圏私立大学の定員厳格化による難化や新しい入試制度下で臨む3年後の大学入試への不安感等から大学の付属校を選ぶといったケースです。2018年度入試でも同様の傾向はすでに見られましたが、公立高校志願者の減少幅がより大きくなった理由の1つには「私立学校学費支援制度」があります。神奈川県内在住で対象となる私立高校に通う場合、所定の世帯年収未満であれば授業料や入学金の補助が受けられるというもので、これを活用して私立高校進学を選択した受験生も多かったと思われます。
高校ごとに見ていくと実質倍率は学校間で大きな開きがあり、その状況は一律ではありません。2013年度から2019年度入試の実質倍率を分布図【2】にまとめました。複数学級の募集があった高校(学科・コース)を対象に集計したものです。2019年度実質倍率1.5倍以上は8、1.4倍以上は11と2016年度に次いで高倍率校が多かったのに対し、1.0倍未満が2018年度の約2倍の39と全体の25%近くを占めており、人気の二極化が顕著だったといえます。募集定員に満たなかった学科・コースが大きく増えた結果、現行制度開始以降最大となる600名規模の二次募集が行われました。
【3】は2019年度入試の高倍率校(学科・コース)のランキングです。学力向上進学重点校に指定されている横浜翠嵐・湘南・柏陽の3校に加え、横浜緑ヶ丘・多摩・光陵といった同エントリー校の7校が含まれています。大学進学に力を入れていて、かつ実績をあげている高校は毎年高倍率化する傾向が見られます。
【3】2019年度高倍率校(学科コース)トップ20
校名 | 学科コース | 合格者数 | 実質倍率 | 2018年度 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 横浜翠嵐★ | 普通科 | 358 | 1.84 | 1.83 |
2 | 神奈川総合 | 個性化コース | 162 | 1.83 | 1.42 |
3 | 横浜緑ヶ丘◇ | 普通科 | 280 | 1.73 | 1.60 |
4 | 神奈川総合 | 国際文化コース | 91 | 1.70 | 1.49 |
5 | 湘南★ | 普通科 | 360 | 1.64 | 1.37 |
6 | 多摩◇ | 普通科 | 279 | 1.61 | 1.69 |
7 | 光陵◇ | 普通科 | 318 | 1.58 | 1.44 |
8 | 横浜市立桜丘☆ | 普通科 | 318 | 1.55 | 1.29 |
9 | 横浜市立金沢☆ | 普通科 | 318 | 1.48 | 1.14 |
10 | 横浜市立東 | 普通科 | 268 | 1.47 | 1.38 |
10 | 横浜平沼◇ | 普通科 | 318 | 1.47 | 1.24 |
10 | 川崎市立橘 | 普通科 | 198 | 1.47 | 1.17 |
13 | 藤沢西 | 普通科 | 319 | 1.45 | 1.36 |
14 | 希望ヶ丘◇ | 普通科 | 358 | 1.44 | 1.35 |
14 | 住吉 | 普通科 | 358 | 1.44 | 1.25 |
16 | 横浜清陵 | 普通科 | 268 | 1.44 | 1.32 |
16 | 柏陽★ | 普通科 | 318 | 1.42 | 1.27 |
16 | 鎌倉◇ | 普通科 | 318 | 1.41 | 1.17 |
19 | 横浜市立みなと総合 | 総合学科 | 232 | 1.41 | 1.31 |
20 | 茅ヶ崎北陵◇ | 普通科 | 278 | 1.40 | 1.21 |
※★は県立の学力向上進学重点校、◇はエントリー校。☆は横浜市の進学指導重点校
学力検査5教科計の合格者平均点は昨年並みの水準に
「採点誤りを防ぐ」ことを目的に2017年度の学力検査から導入されたマークシート方式による解答も今回で3回目となりました。数字や語句を書いたり文章で記述する出題は減っても、選択問題での選択肢の工夫等で問題の難度は維持されており、それは学力検査の合格者平均点にもあらわれています。
神奈川県教育委員会は3月26日(火)に「平成31年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」を公表しました。2019年度は理科と社会を除く3教科で2018年度の合格者平均点を下回り、5教科の合計は263点でした。これまで5教科の中では比較的変動の少なかった国語がはじめて60点台を割り、過去5年間得点しづらかった理科は大きく平均点が上昇しました。各教科の実施結果の概要をみると、「与えられた条件から判断する」「条件を正確に読み取り考察する」「知識や与えられた情報を条件に合わせて整理し、活用する」といった問題では正答率が低かったとあり、求められている力がよくわかります。基礎知識をしっかりと身につけ、それを結びつけながら物事を考えて理解を深める、一方向だけでなく異なる視点からも考えてみるといった訓練を日ごろから積んでおく必要があるといえます。この公表資料では学力検査各教科の出題のねらいや実施結果概要、設問ごとの正答率や合格者の教科別得点分布も掲載されていますので学習の参考になさってください。
神奈川県教育委員会の発表ページを見る
英語 | 数学 | 国語 | 理科 | 社会 | 5科計 | |
2019年度 | 49.8 | 50.3 | 59.1 | 61.3 | 42.5 | 263.0 |
2018年度 | 56.1 | 56.0 | 65.6 | 45.3 | 41.8 | 264.8 |
2017年度 | 51.9 | 63.5 | 73.1 | 46.9 | 54.5 | 289.9 |
2016年度 | 43.0 | 51.7 | 64.7 | 46.5 | 52.0 | 257.9 |
2015年度 | 51.8 | 52.6 | 64.4 | 37.4 | 50.2 | 256.4 |
2014年度 | 59.6 | 51.7 | 60.8 | 38.6 | 49.5 | 260.2 |
2013年度 | 54.8 | 65.5 | 67.8 | 66.4 | 51.1 | 305.6 |
※各教科100点満点
特色検査が変化。7校で共通問題と共通選択問題による実施
これまでは実施校がそれぞれ独自の問題で行っていた特色検査ですが、2019年度は県立進学重点校4校とエントリー校3校の計7校で共通問題2問と共通選択問題2問を組み合わせた形式で実施されました。共通選択問題は準備された4つの中から実施校がそれぞれの評価の観点に基づき2問選択して行われます。出題内容はすべて教科横断型で、科目ごとのテストでは測れない総合力を見るという、その方向性はこれまでの特色検査と変わりません。現中3生が受検する2020年度入試からは進学重点校とエントリー校の計17校すべてで同様の形式による特色検査が実施されます。
【5】2019年度 県立7校の特色検査の構成
学校名 | 共通問題(2問) | 共通選択問題(2問) | ||||
第一言語 | コペルニクス | 立体図形他 | メロディーロード | 感染症と医薬品 | 農作物の貿易 | |
横浜翠嵐 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
湘南 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
柏陽 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
厚木 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
希望ヶ丘 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
横須賀 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 | ||
平塚江南 | 25点 | 25点 | 25点 | 25点 |