2021年度公立高校入試概況
はじめに神奈川県全体の全日制の状況についてお伝えします。以下【1】の資料をご覧ください。これは年度ごとに県内の公立中学校卒業生数、公立高校全日制一般募集の募集定員、応募者数の3項目について前年度との比較(増減)を棒グラフで表したものです。学校基本調査によると、今春は昨年よりも卒業生数が1,930名少なく、公立高校の全日制一般募集の募集定員もマイナス1,550名と昨年度と同規模で大幅に削減されました。応募者数も減少していますが、その数は1,505名にとどまっています。2017年度から4年続いていた「募集定員の削減数以上に応募者数のマイナスが大きい」という状況は改善されましたが、それはこの2年で3,000名超の規模で募集定員の削減が行われたことが大きく影響しているようです。長期的な公立離れが起きている理由として「私立学校学費支援制度」の認知・活用が進んでいることや変化する大学入試に対する不安が挙げられます。はじめから私立高校を第一希望の進学先に選ぶ受験生が増えているため、公立高校に受験生が集まらないという傾向は2021年度も同様に見られました。
2021年度の全日制公立高校の実質競争率(合格発表時の競争率)は1.19倍で昨年度の1.18倍とほぼ変わらない数字でした。しかし、高校・学科ごとの状況は相変わらず一律ではなく、詳細を見ていくと全体の競争率では見えない実情がわかります。【2】は2013年度から2021年度入試で2学級以上募集のあった全日制高校・学科の実質競争率を分布図で示したものです。2021年度、1.5倍以上・1.4倍以上・1.3倍以上の暖色で示した高倍率高校・学科の合計は26校で、2015年度以来6年ぶりに30校を下回りました。濃い青色で示した「実質倍率が1.0倍ちょうどか定員割れ」の高校・学科の割合は全体の26.5%で昨年度よりは下がったものの、37校53学科1,039名の二次募集が行われる結果となりました。
【3】は2021年度入試の高倍率校(2学級以上募集のあった全日制高校・学科について)のランキングです。大学進学を重視し、かつ実績をあげている進学校は毎年高倍率化する傾向が見られ、安定した人気を維持しています。県の学力向上進学重点校に指定されている横浜翠嵐・湘南や学力向上進学重点校エントリー校である横浜緑ケ丘・多摩・大和は毎年ランキングの常連校です。神奈川総合は個性化コース・国際文化コースに加え、2021年度は新設の舞台芸術科でも30名の募集が行われました。2学級以上の募集に絞っているため、このランキングには入っていませんが、2.30倍と大変高い倍率でした。
【3】2021年度高倍率校トップ10
校名 | 学科コース | 合格者数 | 実質倍率 | 2020年度 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 神奈川総合 | 普通科個性化コース | 119 | 1.92 | 1.73 |
2 | 横浜翠嵐★ | 普通科 | 358 | 1.80 | 1.71 |
3 | 横浜緑ケ丘☆ | 普通科 | 280 | 1.68 | 1.39 |
4 | 神奈川総合 | 普通科国際文化コース | 89 | 1.66 | 1.76 |
5 | 多摩☆ | 普通科 | 278 | 1.63 | 1.45 |
6 | 横浜市立みなと総合 | 総合学科 | 232 | 1.63 | 1.37 |
7 | 七里ガ浜 | 普通科 | 360 | 1.49 | 1.30 |
8 | 湘南★ | 普通科 | 360 | 1.49 | 1.48 |
9 | 横浜市立戸塚 | 普通科一般コース | 279 | 1.44 | 1.45 |
10 | 大和☆ | 普通科 | 279 | 1.42 | 1.56 |
※2学級以上募集のあった全日制高校・学科のみ
※倍率は実質競争率(合格発表時の競争率)
※★は県立の学力向上進学重点校、☆は学力向上進学重点校エントリー校。
学力検査5教科計の合格者平均点は12.9点アップ、社会科が押し上げ
4月1日(木)、神奈川県教育委員会は「令和3年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」を公表しました。この発表資料をもとに、学力検査を振り返ります。合格者平均点の推移をまとめた【4】をご覧ください。まず、5教科全体の合格者平均点についてですが、2021年度は301.2点と2020年度から12.9ポイント上昇しています。教科別では特に社会が、72.6点と昨年度から14.4ポイントも上昇しており、5教科全体の合格者平均点の押し上げにつながりました。これだけ平均点が高いので、来年度の社会科は問題難度の調整が入る可能性が高いと考えられます。
各教科の実施結果の概要には、「条件を正確に読み取り考察することが必要」「知識や与えられた情報を整理して活用する」「資料から読み取った内容について、基礎的・基本的な知識と関連付けながら、条件に従って記述する」といった問題では正答率が低かったとあり、受験生に求めている力がよくわかります。基礎知識をきちんと身につけ、それを結びつけながら物事を考えて理解を深める、一方向だけでなく異なる視点からも考えてみるといった訓練を日ごろから積んでおく必要があるでしょう。「令和3年度神奈川県公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」には教科別得点分布や設問ごとの正答率だけでなく、各教科の出題のねらい等も掲載されていますので、学習の参考にしてみてください。
神奈川県教育委員会の発表ページを見る
英語 | 数学 | 国語 | 理科 | 社会 | 5科計 | |
2021年度 | 54.6 | 58.2 | 65.7 | 50.1 | 72.6 | 301.2 |
2020年度 | 49.4 | 55.7 | 69.1 | 55.9 | 58.2 | 288.3 |
2019年度 | 49.8 | 50.3 | 59.1 | 61.3 | 42.5 | 263.0 |
2018年度 | 56.1 | 56.0 | 65.6 | 45.3 | 41.8 | 264.8 |
2017年度 | 51.9 | 63.5 | 73.1 | 46.9 | 54.5 | 289.9 |
2016年度 | 43.0 | 51.7 | 64.7 | 46.5 | 52.0 | 257.9 |
2015年度 | 51.8 | 52.6 | 64.4 | 37.4 | 50.2 | 256.4 |
2014年度 | 59.6 | 51.7 | 60.8 | 38.6 | 49.5 | 260.2 |
2013年度 | 54.8 | 65.5 | 67.8 | 66.4 | 51.1 | 305.6 |
※各教科100点満点
学力向上進学重点校と同エントリー校17校の特色検査「共通選択問題」採択状況
2021年度も県立の学力向上進学重点校と同エントリー校の計17校では共通問題と共通選択問題を組み合わせた形式による筆記型の自己表現検査 (以下特色検査)が実施されました。全校共通の問1・問2に加え、共通選択問題の中から学校ごとにさらに2問を選んで出題するというスタイルは昨年度と同じです。各校の共通選択問題採択状況は【5】をご覧ください。
学力向上進学重点校と同エントリー校17校では易化する学力検査で差がつきにくくなっているため、特色検査の重要性がより高まっています。特色検査の得点差が合格・不合格に大きく影響しますので、1点でも多く獲得できるよう、受験生はしっかりと対策と訓練を行っておく必要があります。なお、2020年12月に新たに学力向上進学重点校エントリー校の指定を受けた横浜国際高校は、2022年度入試から共通問題と共通選択問題による特色検査が実施されます。
【5】2021年度の特色検査「共通選択問題」採択状況
学校名 | 2021年度採択状況 | ||||
---|---|---|---|---|---|
問3 | 問4 | 問5 | 問6 | 問7 | |
川和 | ○ | ○ | |||
湘南 | ○ | ○ | |||
希望ケ丘 | ○ | ○ | |||
横浜平沼 | ○ | ○ | |||
柏陽 | ○ | ○ | |||
横須賀 | ○ | ○ | |||
茅ケ崎北陵 | ○ | ○ | |||
小田原 | ○ | ○ | |||
大和 | ○ | ○ | |||
相模原 | ○ | ○ | |||
鎌倉 | ○ | ○ | |||
光陵 | ○ | ○ | |||
横浜緑ケ丘 | ○ | ○ | |||
多摩 | ○ | ○ | |||
平塚江南 | ○ | ○ | |||
横浜翠嵐 | ○ | ○ | |||
厚木 | ○ | ○ |
特色検査に対応できる学力を身につけることを中学校3年間の学力到達目標に
4月、新学期がスタートしました。中学生の皆さんには特色検査に対応できる学力を身につけることを3年間の学力到達目標として日々の学習に励んでほしいと願います。中学3年間で培う学力は高校入試を突破するためだけでなく、その延長線上にある大学入試、さらには社会に出てから必要となる力につながるからです。新しい学年での皆さんの活躍を祈っています。